私たちは「全身麻酔」と聞くと何を思い浮かべますか?
多くの人が「手術」を思い浮かべるのではないでしょうか。
当然、猫の場合も人と同じで手術の時は全身麻酔は欠かせないものとなります。
そして、処置の内容によっては人なら無麻酔で行うものも、猫の場合は全身麻酔が必要になるケースは珍しくはありません。
そんな猫の全身麻酔ですが、どんなものかを理解している飼い主さんは医療従事者でもない限りあまり多くないと思います。
この記事では猫の全身麻酔の目的と種類についてわかりやすく解説していきます。
どうして猫に全身麻酔が必要なの?麻酔の目的を解説!
猫に全身麻酔が必要な理由は人と同じで「鎮静、鎮痛、筋弛緩」を目的としています。
ここからは鎮静、鎮痛、筋弛緩について簡単に解説していきます。
・鎮静
鎮静は意識を消失させることです。
動物の手術中の不快な思いや記憶をなくすことを目的としています。
・鎮痛
鎮痛は痛みを軽減することです。
手術中の麻酔のかかり具合を適切に維持することで、手術による刺激(痛みなど)が加わっても動物が目を覚ましたり血圧が急激に上昇しないようにして、手術中に起きる有害反射を抑えることを目的としています。
・筋弛緩
筋弛緩は骨格筋(一般的には筋肉と言われます)を弛緩させます。
呼吸を確保するための気管チューブの挿管時の喉頭展開(喉頭鏡をかけて声門を視る操作)を行いやすくし、全身の不動化や良好な手術視野の確保を目的としています。
次は全身麻酔の種類について解説します。
猫の全身麻酔にはどんなものがあるの?
猫の全身麻酔は吸入麻酔と注射麻酔の2つがあります。
ここからは吸入麻酔と注射麻酔について解説します。
吸入麻酔
麻酔性ガスを吸わせて全身麻酔をかける方法です。
マスクをつける前に超短時間型の注射麻酔を使用します。
吸入麻酔は麻酔の濃度を気化器の目盛りでこまめに調節することができます。
麻酔の効きが足りなければダイヤルの目盛りを上げて濃度を高め、反対に効きすぎていたらメモリを下げて濃度を低くすることで常に麻酔の細かなコントロールができます。
そのため安全性が高いです。
注射麻酔
注射のみによって麻酔をかける方法です。
一定の量を注射すると一定時間麻酔がかかります。
麻酔が切れそうになったらその都度追加の麻酔を注射して調整していきます。
使用される麻酔の量の基準はありますが、麻酔の効き具合は個体によって様々です。
なので、基準の量でも効きすぎて呼吸が止まってしまう猫もいれば、逆にまったく効かずに処置が行えない猫もいます。
また、ドミトールという注射麻酔薬は猫では不整脈を引き起こすため使用できません。
そして現在では安全性の高さから、短時間の手術でも吸入麻酔を使用する病院が大半です。
まとめ
いかがでしたか?
全身麻酔は事前にきちんと準備を整えて行えば、治療を行う時の強力な味方になってくれます。
しかし、残念なことにいくら入念に準備をしたとしても麻酔のリスクを0%にすることはできません。
そのため、全身麻酔に対して不安を感じる飼い主さんは多いです。。
その結果、「全身麻酔が必要になる前に病気の予防・治療を行うこと」が大切になってきます。
全身麻酔の使用は極力避けて本当に必要な時だけ使うためにも自宅でのこまめなケアと観察、年に一回の健康診断で病気の早期発見をすることが大切です。